以前にも簡単にマウンテン・ダルシマーという楽器について書きましたが、久しぶりに『アイリッシュ・ソウルを求めて』という本(良書です!)を読み返しているとダルシマーについての詳しい記実がありました。
それはジーン・リッチーによって書かれたもので、マウンテン・ダルシマーは17世紀ドイツの楽器 Scheitholt を祖先とし、これから派生したノルウェイの Langeliek、フランスの Epinette des Vosges、オランダの Humle のそれぞれの要素が混合して出来た。チューニングや爪(所謂ピック類のこと)を用いて演奏する方法はノルウェイから、爪に鳥の羽根を使うのはフランス流、ボディの形状はオランダの楽器に似ているとある。アメリカに渡って来た移民の記憶の中の伝統楽器が混合されマウンテン・ダルシマーになったのだろうということだ。
以前の記事に僕はツィターという楽器がダルシマーの原型だろうと言われていると書いた。ツィターは映画『第三の男』のテーマ曲に用いられたことで有名な楽器。先に挙げた楽器がどんなものなのかは良く分かりませんが、きっとこれらはツィターと同じように弦を弾いて音を出す撥弦楽器なのでしょう。
ダルシマーにはハンマード・ダルシマーと呼ばれるものもあり、その名が表すように木の棒のスティックなどで弦を叩き演奏します。ハンガリーあたりで演奏されるツィンバロン、イランのサントゥール、中国の揚琴なども同類の楽器。
ハンマード・ダルシマーの紹介文にもよくツィターが元にと書かれていますが、形こそ似てはいるものの、撥弦楽器のツィターと、弦を叩くことで音を出す打弦楽器であるハンマード・ダルシマーは別の系譜のように思えます。
『アイリッシュ・ソウルを求めて』の注釈によるとマウンテン・ダルシマーという楽器はケンタッキー州バースのJ・エドワード・トーマスという人が初めて作ったと言われているらしい。それがいつの時代だったのかの記載はない。1922年生まれのジーン・リッチーが子供だった頃、彼女の住んでいた地域に楽器はなかったと言う。歌はアイルランドや英国の伝統的な歌唱法と同じく旋律主体の無伴奏で歌われた。マウンテン・ダルシマーが一般に知られるようになるのは1950年代になってからのこと。