先頃、Smithsonian Folkwaysから"Classic Appalachian
Blues"というコンピレーション・アルバムがリリースされました。
アパラチアのブルースというキーワード、実は昨年あたりからひっかかっていたのでした。
切っ掛けはノースカロライナ生まれのエタ・ベイカーというブルース・ウーマンが1956年にTraditionというレーベルに残したレコードがCD化されたこと。このアルバムのタイトルが"Instrumental Music of the Southern Appalachians"というんです。
ブルースとアパラチア音楽? そんなこと今まで考えたこともなかったのでとても衝撃を受けました。
同じくノースカロライナ生まれのブルース・ウーマン、エリザベス・コットンを始め、この地域にはラグタイムギターのフィンガーピッキング・スタイルを基調とした共通点があります。歌は古くから伝えられたバラッドが多いのも特徴。一般的にイースト・コースト・ブルースと呼ばれていました。
ウィキペディアによるとアパラチア山脈とは「北端はカナダニューファンドランド島で、そこから北アメリカ大陸東部を南西方向に縦断し、南端はアラバマ州の中央に至る。また、その裾野はミシシッピ州北西部にまで及んでいる」とあります。このアパラチア山脈にはピードモントと呼ばれる丘陵地域があり、この地域はブルースマンの宝庫なのです。
最近ではエタ・ベイカー、エリザベス・コットン、その他のこの地域のブルースをピードモント・ブルースと称するようです。ミシシッピ州アヴァロン生まれのミシシッピ・ジョン・ハートもこの仲間に加えてもいいかも知れません。
カントリーミュージックのみならず、米国のポピュラー音楽に大きな影響を与えたカーター・ファミリーはヴァージニア出身、アパラチアを代表するグループです。
メンバーは新しい歌を求めてヴァージニア南西部の旅に出ます。その際に出会ったのがレズリー・リドルというブルースマン。
ギター奏者のメイベル・カーターはリドルのギター奏法に強く影響されたという話は有名です。後にメイベルはリドルから学んだと思われる奏法でVictory Ragという美しい曲を残しています。
エタ・ベイカーの復刻CDを手にしたとき、このカーター・ファミリーのエピソードを思い出したぼくの頭の中には、ブルースとアパラチア音楽を繋ぐ線が見えて来たのでした。
絶妙のタイミングでリリースされたこのコンピレーション・アルバム。タイトルを見た時は思わず膝を打ちましたよ。
記事を書く為に色々調べていて更にびっくり! レズリー・リドルのフルアルバム(1965年と78年にマイク・シーガーによって収録)もリリースされていました。リドルはブラウニ−・マギーとも親交があったようです。